2013年08月の記事 (1/1)

唯我独尊なコラム32「物に支配されるな」

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ROLEX(ロレックス) OYSTER PERPETUAL SUB MARINER NO DATE
オイスター パーペチュアル サブマリーナ ノンデイト Ref.114060
Chronometer/クロノメーター ルーレットダイヤル SUS904L (私物)

唐突ではあるが、愛用していた金無垢時計を売却した。
お金に困ってやむを得ずという理由ではない。

6年ほど前に金無垢時計を購入してから、ほとんどそればかり身につけていたが、
目立つのはもとより、やはりいろいろと人間関係に軋轢が生じることが多かった。

胡散臭い会社経営者の若者や、世間知らずの資産家爺さんまで色々な人間が寄ってきた。
金無垢時計というのは成功者のステータスシンボルであるせいか、本当に人を惹き寄せる。
それに当時の私は自分に自信が無かったし、強面に見られることにある種の快感があった。
毎週のように百貨店に出向き、金無垢時計を見た店員に丁寧に接客されることに満足し、
自分には決して釣り合わないような美人と付き合うことで、その生き方を肯定していた。

だが一方で、「時計なんて時間が分かればいいんだよ」という野性的な男に憧れていた。
ああいう風に、見た目にこだわらないで無骨に生きる人間になりたいと常に思っていた。
人に会うたびに金無垢時計を誇示し、自分がいかに成功している人間かを競い合うような、
そんな人生は本当に虚しいし、常に気を張り続けなければならない。

そんな中、とある女と出会った。
彼女は、いつもお気に入りのファストファッションのブランドで服を買う。
高くて数千円の服を真剣に選び、特に気に入った服は毛羽立っても色あせても捨てない。
彼女はとても美人で周りの男からいつも口説かれている。モデルをやっていた事もあるそうだ。
私は「なぜブランド品が欲しくないのか?高い服は着ないのか?」と訊ねたたことがある。
彼女は笑って「昔はたくさんのブランド品を持っていたよ。今でも欲しいものはたくさん。」と言う。

彼女がなぜファストファッションで満足できるのか、最初は分からなかった。
そんな疑問を抱いたまま、彼女に告白され、付き合いはじめた。

付き合い始めてすぐ、彼女は私に言った。
「あなたはいつも気を張っていて可哀想。もっと普通にした方が良い。」

私は自分の享楽的な人生を否定されたようには感じなかった。
むしろやっとそれを言ってくれる人がいたのかという悦びの方が強かった。

彼女に「私のどこが良いんだ。私なんてカリスマ性もない単なる凡人でしかない」と問うた。
笑いながら彼女は、「あなたの生き方に惹かれた。こんな人いるんだな、って。」と答えた。
彼女は、私の外見や社会的地位などに全く興味を持っていない。
デートに上下スウェットで来ようが、全く気にしない。
美味しいものが食べられる高級店じゃなくて、安いチェーン居酒屋で良いと言う。

彼女は「美味しいものはたくさん食べてきた。だからもういらない。」と私に言う。
今彼女にとって価値があるのは、物質的な満足ではないようだ。
彼女はいつも私に言う。「私のために見栄を張ってお金を使うのは止めて欲しい。」

金無垢時計はもういらないな、と私は思った。
これから先、彼女のような人たちと付き合っていかなければならないと思った。

高級品は素晴らしい、所有する悦びを与え、人生に活力を与える。それは否定しない。
だが物に縛られ、物に支配され、物のために生きてしまうといつか限界が来る。
高級品あるいは嗜好品は、自分自身のために存在する。
人生の選択肢を増やし、価値観や視野を広げるためでしかない。

金無垢時計を売った金は、自分の周りにいる人たちのために全て使った。
その中に、彼女がずっと欲しがっていた高級ブランドのバッグも含まれているのはご愛嬌。
私はこれから、この傷だらけのSUB MARINERと共に誇り高く生きていこうと思う。

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